外来でよく診る 病気スレスレな症例への生活処方箋 エビデンスとバリューに基づく対応策

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医師が知りたい医学統計

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みんなが信じている健康法のウソ

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慈恵 分子疫学研究室

Global Health Change Agents
2019年04月11日
ビタミンDによる癌患者さんの再発死亡の予防試験の論文がJAMA (アメリカ医師会誌) に掲載されました New!

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4月9日、私達が約10年かけて継続してきたビタミンDによる癌患者さんの再発死亡の予防試験が 終にJAMA (アメリカ医師会誌) に掲載されました(2017年のインパクトファクターは48点です)。 JAMA. 2019;321(14):1361-1369. doi:10.1001/jama.2019.2210

Effect of vitamin D supplementation on relapse-free survival among patients with digestive tract cancers: The AMATERASU Randomized Clinical Trial
(消化管癌の患者さんにおけるビタミンDサプリメントの無再発生存率に及ぼす影響:アマテラス・ランダム化臨床試験)
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2730111

背景
ビタミンDは骨を丈夫にする栄養素の1つとして知られていました。 しかし、2000年代頃より、血清ビタミンDレベルが低いと、様々な疾患発生を引き起こすのではないかという観察研究の報告が相次ぎました。 例えば、癌の患者さんと癌ではない患者さんの血清ビタミンDレベルを比較すると、癌の患者さんで明らかに低い傾向にありました。 さらに癌の患者さんの中でも、ビタミンD血清レベルが高い方が低い場合に比べて、再発率、死亡率が低い傾向にありました。

そのメカニズムとして、血清中のビタミンDを癌細胞が取り込み、細胞内部で活性化し、 これがビタミンD受容体と接合し、核内受容体としてDNAに接着し、その下流にある様々な遺伝子の発現を調整することが実験研究などで示唆されています。 あるいは、病理学的検討で、免疫を介したメカニズムなのでは?という説もあります。

ビタミンDの血清レベルを上げるには、太陽のひざしにあたるだけで十分です。 太陽にあたるか否かが一番大きな要素ですが、干しシイタケやサケや青み魚を沢山食べる、 ビタミンDのサプリメントを摂ることでもビタミンDのレベルは上がります。 ですから、血清ビタミンDが低いことで、癌になりやすかったり、癌になっても再発しやすかったりするのであれば、 ビタミンDの血清レベルを上げるのはとても簡単なので、癌の発症を予防できるかもしれませんし、癌になっても再発・死亡率を抑制できるかもしれません。 特にビタミンDサプリメントは極端な大量摂取でもしない限り副作用はありません。サプリメントの値段が高いという人でも、 日光にあたれば血清ビタミンDレベルを上げることができるので、タダで癌の発症を予防したり、 癌になっても再発し難くなるというのであれば、こんなによいものはありません。

しかし、癌が再発する前兆として血清ビタミンD濃度が低い可能性もあります。 この場合、ビタミンDレベルが低いことが原因で再発するわけではなく、再発することでビタミンDが低くなる、 ただ癌が再発して大きくなるまで多少の時間がかかるので、一見ビタミンDレベルが下がるのが先だから、これが癌発症や再発の原因のように見えてしまう。 つまり原因と結果が逆転しているのです。 また、本当は日頃より運動すると癌の発症や再発・死亡を予防できると仮定してみましょう。 外で運動する結果、陽にあたる機会が増え、血清中のビタミンDレベルが上がる。 そうすると、ビタミンDには何の効果もないにもかかわらず、あたかも関係するかの如く見えてしまう可能性もあります。 このように観察するだけの研究では、様々な因子が交絡しているため、血清ビタミンDレベルが低いと癌の発症率が上がる、 癌患者さんの再発・死亡率が上がるという因果関係を結論づけることはできません。

血清ビタミンD濃度が下がることが原因で癌が再発するのか、あるいはその逆なのかは、 ビタミンDサプリメントを使ったランダム化プラセボ比較試験を実施することで明らかにすることができます。

そこで我々はビタミンDサプリメントを1日2,000IU 飲むことで、消化管癌(食道、胃、小腸、大腸)の再発・死亡を減らすことができるか を、 二重盲検ランダム化比較試験により明らかにしようと考えました。 日本発のビタミンD試験⇒日光⇒太陽神⇒日本の神話:天照大御神と連想し、この研究をアマテラスと命名しました。 最初の研究計画書は2018年に作成しましたが、予算を集めたりといったことで多少時間を要し、最初の患者さんのエントリーは2010年の1月からとなりました。 あとはひたすらデータを蓄積し、予定の400人の患者さんに研究に参加いただいた時点で登録を終了し、2018年の2月に試験を終了しました。 今考えると10年がかりの研究です。 我々が研究を開始したあとになりますが、アメリカで癌の発症予防を目的としたVITAL 試験、 フィンランドでも類似研究のFIND 試験が開始され、世界での競争がはじまりました(Science 337: 1476-8; 2012)。

方法
417人の癌患者さんをビタミンDのサプリメント(1日2,000IU)を内服する群251人と プラセボ(見た目も味も全く同じカプセルだが、ビタミンDが入っていない偽サプリメント:このことでサプリメントを渡す 医療者も患者さん側もどちらを内服しているか判らない、いわゆる二重盲検法)群166人にランダムに振り分け、 どちらの群で再発あるいは死亡が多いかを観察しました。

結果
ビタミンD群に振り分けられた患者さんのうち77%の方々は再発なくご存命でした。 一方、プラセボ群では、69%でした。 その差は8%ありますが、残念ながら統計学的に差があるとは結論できませんでした。

たまたまなのですが、ビタミンD群はプラセボ群に比べ、年齢が高い傾向にありました。 年齢が高い方が再発・死亡率が高いので、これで補正すると、この8%は統計学的に有意に違うという結果になりました。 我々は最初、この結論で論文投稿しました。 しかし1月1日の朝、JAMA の編集部より、「補正は研究計画書には記載されていない、結果が出そろってからの解析だから後付け解析で、これを結論にするのはまずい。 逆に、補正しない結果を結論とするのであれば、採択の可否について議論を深めたい」とのメールが届きました。 JAMA に投稿したのが2018年の8月31日でしたから4カ月経ち、そろそろJAMA の編集部に催促のメールを書こうと思った矢先のことです。 早速Agree という返信を打ちました。 1月11日、JAMA より200に及ぶコメントが返ってきました。 1つ1つが鋭く芯の有るもので、あたかも「高校生の私が巨人軍のキャンプ地で入団を願い出て、 これからのノックをエラーなく全て1塁に送球できたら2軍への採用を考えてやろう」と言われているようなものです。 しかも期限は2週間。さらに2回、編集部とのやりとりを経て、やっと受理にこぎつけました。

誌上発表
日本時間の2019年4月10日深夜0時、AMATERASU の結果は、JAMA に誌上発表されました。 驚いたことに、ハーバードのダナ・ファーバー癌研究所の研究チームも手術適応外の進行大腸がんに対する ビタミンDの効果をみる二重盲検ランダム化プラセボ比較試験(SUNSHINE)を発表していました。 我々の研究では手術適応のある患者さんを対象としていたので、相互に補完的です。 しかし、結果の方は驚くほど類似していました。 全体としては差がないが、補正するとビタミンDが癌の進行を抑えるという結果です。

JAMA とすれば、世界の2つの異なる地域から同時に提出された論文の結果がこれだけ類似していれば、信ぴょう性が高まりますし、 世界の医療に与えるインパクトも大きいということで、同時掲載の運びとなったのでしょう。 ただ、論文を投稿してから査読が終わって編集部から回答を得るまでに1ヵ月〜2カ月が普通なのに、 今回査読に4カ月かかったのは、ハーバードの結果がでるのを待ったのではないかと感じています。 しかし、考えようによってはハーバード大学と肩を並べて競えるところまできたともいえるので、感無量です。 おまけに、JAMA 編集部はAMATERASU とSUNSHINE を解りやすく解説した総説を書き、解説ビデオまで作製してくれていました。 私は一切伝えていないのに、ビデオの中で歌川 国芳の描いた天照大御神が登場したときは、思わず笑ってしまいました。

VITAL の方もハーバード大学の研究で、25,000人のアメリカ人を対象にビタミンDサプリを内服する群と、 プラセボ群にランダムに振り分け、ビタミンDが癌の発症を予防できるかをみるものです。 今年の1月にNew England Journal of Medicine に誌上発表されました。結果は予防しないでした。 しかし、本文を読むと、body mass index (BMI) が25未満で正常の人達だけに解析を絞ると、ビタミンDは癌の発症を24%予防していました。 アメリカ人ではBMI が25以上の過体重・肥満の方が普通なので、差が無かったが、 この研究を日本で実施していたらビタミンDは癌の発生を抑制していたかもしれません。 また、サプリ開始2年以降のデータのみで解析すると、がんによる死亡を25%も予防できていました。

つまりVITAL、SUNSHINE、そして我々のAMATERASU、3つの研究はいずれもビタミンDサプリが癌の発生、 予後改善に寄与していないという結論となりましたが、細かくみるとまだまだ可能性は残っていると感じています。

これから
現在、後付け解析を進めています。 また一度ボストンにあるハーバード大学にでむいて、VITALとSUNSHINE、そして我々のAMATERASUを合わせるメタ解析の相談にいってこようと考えています。

つづく


2018年06月14日
出版のお知らせ

ハーバード留学の際「。。。医師は薬の処方ができるのは当たり前、食事や運動などの生活処方ができて一人前。。。」という言葉に感銘を受けました。
その後、食事や運動のエビデンスを集め、やっと出版に至りました。


外来でよく診る
病気スレスレな症例への生活処方箋
エビデンスとバリューに基づく対応策
外来でよく診る病気スレスレな症例への生活処方箋エビデンスとバリューに基づく対応策

浦島充佳著
ISBN: 978-4260035934
発売日: 6月18日


第1章【高血圧症】
 血圧が高めなので薬を飲んだほうがいいですか?

第2章【脂質異常症】
 検診で血清脂質の異常を指摘されました。心筋梗塞や脳卒中が心配です。検査値を良くする方法はありますか?

第3章【肥満症】
 体重を減らしても、すぐにリバウンドしてしまいます

第4章【糖尿病】
 検診で血糖値がやや高いことを指摘されました。糖尿病は予防できますか?

第5章【慢性閉塞性肺疾患(COPD)】
 階段を登るときや歩いているとき、息が上がります

第6章【閉塞性睡眠時無呼吸症候(睡眠時無呼吸症候群)】
 寝ているとき「いびきがうるさく、時々息が止まる」と妻に指摘されました

第7章【過敏性腸症候群】
 左下腹部の痛みと、軟便が数ヶ月続いています

第8章【一過性脳虚血発作】
 軽い脳卒中を起こしましたが無事に退院できました

第9章【安定狭心症】
 運動時に胸骨の下あたりに違和感があります

第10章【骨粗鬆症】
 保健所で骨の検診を受けたら骨粗鬆症と言われました

第11章【椎間板ヘルニア】
 重いものを持ち上げたとき腰を痛めました

第12章【肩痛(肩インピンジメント症候群)】
 お皿を棚の高いところに戻すとき肩が痛みます

第13章【膝痛(膝の骨関節炎)】
 階段の上り下りをする際、膝が痛みます

第14章【軽度認知症(認知症)】
 最近良く物忘れをするんです

第15章【がん】
 大腸がんを予防したいのですが、スクリーニング検査を受ければ十分ですか?


2017年01月13日
東京マラソン

2月26日 東京マラソンにチャリティーランナーとして参加します。
今年は6回目ですが、自己ベスト更新にチャレンジです。


2016年2月11日
ジカ熱と小頭症との因果関係を強く示唆する論文が発表されました。

ジカウイルスの存在は1947年より知られていましたが、アフリカから東南アジア、ミクロネシア、中央〜南アメリカに感染範囲を広げてきました。同時にジカウイルスは、環境に適応するため遺伝子変異を繰り返してきたものと思われます。特にNS1とNS4Bに遺伝子変異が生じたことにより、感染力をましブラジルを中心とする大規模アウトブレイクにつながったものと思います。また、同変異により神経親和性を増し、小頭症やギランバレー症候群の合併頻度が急増したとも推定できます。
下記PDFファイルには上記根拠とジカ熱対策の予想される問題点についてコメントを記しました。
ジカ熱と小頭症(PDF)


2015年09月01日
出版のお知らせ

医師が知りたい医学統計
よりよいEBMの実践
医師が知りたい医学統計

浦島充佳著
ISBN: 978-4489022173
発売日: 9月10日


原因論(Causality)、相関関係(association)、因果関係(causal relation)をはじめ、以下の目次の内容になります。

第I部 仮説醸成
Chapter.1 原因論:Causality
Chapter.2 地理情報システム:Geographic information system
Chapter.3 Case Series Report
Chapter.4 エコロジカル研究:Ecological study

第II部 生物統計できった医学研究
Chapter.5 標本分布:Sample distribution
Chapter.6 推定と推論:Inference and Hypothesis testing
Chapter.7 Student's t test
Chapter.8 二項分布:Binomial Distribution
Chapter.9 Poisson Distribution
Chapter.10 対象数:Sample size
Chapter.11 線形回帰:Linear Regression
Chapter.12 ロジスティック回帰:Logistic Regression
Chapter.13 生存解析:Survival Analysis
Chapter.14 メタ解析:Meta-analysis

第III部 疫学できった医学研究
Chapter.15 Risk
Chapter.16 2×2表:Two by Two Table
Chapter.17 ランダム化比較試験:Randomized controlled trial
Chapter.18 多変量解析:multivariate analysis
Chapter.19 層別解析:Subgroup Analysis
Chapter.20 記憶バイアス:Recall bias
Chapter.21 Screening biases
Chapter.22 紹介バイアス:Referral bias
Chapter.23 過剰診断:Overdiagnosis
Chapter.24 標準化:Standardization
Chapter.25 用量依存性:Dose-dependency

以下、本に載せきれなかった章をPDFで公開しております。
infectious disease (716KB)
Nonparametric (272KB)
Baye's theorem (407KB)
Cohort study (715KB)
Case-control study (217KB)
Early stopping (302KB)
Dead heat (362KB)
Tipping point (373KB)


2015年02月20日
出版のお知らせ

みんなが信じている健康法のウソ
みんなが信じている健康法のウソ

・糖質制限ダイエットはリバウンドしやすい。
・健康診断を受けても寿命は延びない。
・体に悪いサプリメントもある。
これらは全てエビデンス(臨床医学データ)に基づいた真実です。

正しい知識があれば、病気になるのを防げます。
医者が研究したデータに基づいた、正しい健康法のうち、日常、簡単にできることだけをリストアップ。

PM2.5やアレルギー対策、グローバルヘルスなど、気になる最新情報も満載。

眉ツバ健康法にはもうウンザリ、という方にこそオススメです!

浦島充佳著
ISBN: 978-4838727254


 
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